ブックレビュー:ハカる考動学
2016年5月12日 10:00
また今週も最近読んだ本をご紹介します。
今回は三谷宏治氏著『ハカる考動学』。本書も運営堂 森野さんの蔵書よりお借りしました。
データや情報を分析したい人に
Webサイトの運営に関わっていると、サイトに関する様々なデータに触れる機会がたくさんあります。
例えば、Google Analyticsで確認できるサイトのアクセスログや、ECサイトなら売上や注文に関する情報など。
サイトの現状を知り改善のための糸口とすべく、そういった情報を眺めてみたものの、ただただ並ぶ数字や言葉を目の前に何から手を付ければいいのか呆然とする・・・。
そもそもデータを扱うには、統計学など専門的な知識や教育が必要なのではないかと考えてしまって、自分にはできないと考えてしまう・・・。
そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する『ハカる考動学』は、そんな方々にオススメの本です。
本書は、著者が社会人教育や企業での社内コンサル研修に用いた研修素材を元に綴られています。
その題材は「FF対ドラクエ」「渋滞問題」など、ユニークで身近な興味をひくものばかり。
そして、それらの題材を通して具体的に「ハカる」ことについて、難しい専門知識や学問的なアプローチというよりも、筆者自身の経験の中から導いた実践的な内容で語られています。
ハカることから、革新的なアイデアは生まれる
では、タイトルにある「ハカる」とは何か?
本書の冒頭には、「ハカる」とは「測る」「量る」「計る」のこと、つまり対象物を計測・測定することで、そこから対象物の中に潜むインサイトを見抜くこと、と書かれています。
また数値を測ることだけではなく、TVや雑誌、写真など、身近な情報をよく観察し、傾向を探ることも「ハカる」ことの一つだそう。
ハカることができるようになれば、それを元に「発想をジャンプさせる」ことができ、そこから革新的なアイデアや解決方法を導くことができるようになるのだ、とも。
なんだか「ハカる」ってスゴい。魅力的かも。そう思われたら、是非本書を読んで欲しいと思います。
「ハカる」の基本が身につけば、一次情報を扱えるようになる
本書の「はじめに」に、TVドラマ「北の国から」の脚本家、倉本聰氏のことばが紹介されています。
今の若者に一番足りないのは「想像力」。情報はネットから入ってくるから自分で考えない。一次情報から類推して考えたり、新しいものを編み出したりすることがない。
思い当たるフシがある人もいるのではないでしょうか。
面白い商品を、革新的なサービスをと、斬新な改善方法を求められて考えるけれど、どこかから借りたようなイマイチな案しか出てこない。
それって、一次情報(例えば顧客アンケートや、購買情報、Analyticsのデータもそうですね)をうまく扱うことができないから、そもそも扱い方がわからないから、というところに収れんされてしまうのかもしれません。
一次情報を扱うには、「ハカる」の基本を身につけなければならないと、著者は言います。
その基本とは「ハカる枠組み」をつくること。具体的には、以下の4つからなっています。
- 軸(何を測るか)を決め
- 目盛りを刻み
- データを集め
- データを組み合わせる
このハカる基本を身につけるために紹介されているのが「巷にあふれる無料のアンケート調査結果を使って、再分析するトレーニング」です。
オリコンランキングや、gooリサーチなどで公表されているアンケート調査の中から題材をチョイスして、それを再分析するというものです。
詳細は本書に譲りますが、「まずはまとめず細かく見る」「いろいろグラフを書いてみる」「差と重みでまとめる」などのポイントに気をつけて進めていきます。
これは、すぐにでもやってみたいと思いました。
自社の情報や、クライアントのデータを題材にできると実践的で尚よしですよね。
3つの「ハカる」
また、本書ではハカることを大きく3つに分けて紹介していて、「ハカる」ことで成果をあげるには、これらに挑戦しなければならないと語られています。その3つを以下に簡単に紹介します。
[1]モノではなく「ヒトをハカる」
→ヒトのココロをハカることで、サービスや商品の持つ価値を測る。ただ、ココロをハカるのは難しいので、行動を数値化して測る。
[2]頭で考えるのではなく「作ってハカる」
→事前の調査や、事後の分析ではなく、試作品やプロトタイプ、時には完成品をテスト販売するなどして、顧客の反応を積極的にハカる。
[3]旧来の仕組みでなく「新しいハカり方を創る」
→既存の基準でハカれないときには、ハカり方自体を創る。
この中でも、[2]の「作ってハカる」の中で、住宅建築のハカる例として紹介されていたことには共感を覚えました。
顧客ニーズは時としてあいまいだ。それをハカるには、実物を作って見せるしかない。だからパソコン上で作る。・・・(中略)・・・後での手戻りが大幅に少なくなって、施工現場でのコストダウンにもつながるという。
と言うのも、これはグランフェアズでも、サイトを構築する前に設計段階で”モックアップ”(実際にブラウザ上でリンクや簡単なギミックの動作を確認できる、原寸サイズで作成されたプロトタイプ)をクライアントと共有し合意することで、プロジェクトをスムーズに進行することを実践しているからです。
実際に実施していることとリンクすると、ああ、これも「ハカる」なのだなと、スッと腑に落ちました。
最後に
ここまで、本書の中で大切だと思ったことをまとめてご紹介しましたが、正直に言うと、自分にとっては理解し難い部分もありました。
きっと、自分がまだ情報をハカる経験が少ないということが一番の原因なのだろうと思います。
そういう意味では、本書を読むだけではだめで、実践を伴ってはじめて「ハカる」ことがどういうことか分かるのかなと思いました。
ただ、この本を読んだことで、情報やデータに対する扱い方の勘所が少しわかった気がします。
羅列される情報を目の前にして、何をどうすればいいのかと、ウンウンうなるだけということはなくなりそうです。
今後は臆さず情報に向き合って、「ハカる」を実践してみようと思います。
2016年5月12日 | MaedaKazutoshi | コメント(0)