ブックレビュー:情報の強者
2016年5月26日 10:00
今日も最近読んだ本をご紹介します。今回は、伊藤洋一氏著『情報の強者』です。
伊藤洋一流「情報を扱う2大原則」
本書を知ったのは、運営堂 森野さんから、情報収集にと勧められた「伊藤洋一のRound Up WORLD NOW!」のポッドキャストからでした。
この番組は、一週間のうちに起った、社会、経済、政治などの出来事を国内外問わずピックアップして紹介してくれる情報番組です。
その内容は、例えばアメリカの大統領予備選から、最近買ったデジタルデバイスまで幅広く、番組の中で伊藤氏は「自分が”情報の強者”というわけではないけれど」と謙遜していましたが、その知見の幅広さ、洞察の深さ、まさに博覧強記。情報の強者によるそれです。
本書では、そういった幅広い情報を大量に扱う伊藤氏が、玉石混交の情報の波からどのように情報を拾い、選択し、まとめて、自分のモノにしているかについて、実体験を元に書かれています。
情報を「商売道具」として扱う著者には、情報に向かうにあたって、2つの原則があるといいます。
ひとつは、情報を「思い切って捨てること。
もう一つは、情報の「ループをつくること」。
今回は、これらを中心に、本書の内容をご紹介します。
情報を捨てる
本書の冒頭に、著者の情報の拾い方が紹介されていますが、これが興味深いものでした。
かいつまんでご紹介すると、午前の仕事を始める前はこんなスケジュール・・・
- 朝3時に起きて、日本の新聞、海外の新聞、マーケットの展開を寝転がったままスマホでチェック。で、4時に1回寝る。
- 6時に起床してネットで情報収集後、お風呂でラジオを聴きながら新聞を読む。
- ランニングにでかけ、帰宅後、8時からNHKBSのワールドニュースをチェック。他のテレビの情報番組は見ない。
- その後、原稿執筆や、テレビ、ラジオへの出演などのお仕事スタート…
著者の情報の拾い方は、僕のような凡人からしたら、やはり情報のプロともなると、寝る間も惜しんで半ば常軌を逸したやり方をしないといけないのか・・・と、ビックリさせられるものですが、本書を読むと、ただ早起きをしてたくさん情報を拾っている、ということではないことが分かります。
著者は、これを「不必要な情報を拾わない。」ためのルーチンなのだといいます。
時間とその時にチョイスする情報(メディア)にちゃんと理由があるのだそうです。
例えば、朝3時に起きて新聞を読むのは、新聞の特ダネが流れやすいのが、この時間だから。
朝にテレビの情報番組を見ないのは、同じ情報が繰り返し放送され、無駄が多いから。
つまり拾う段階でフィルターをかけ、要らない情報を事前に「捨てている」んですね。
情報のプロといえど、やはり人の子。人間のキャパシティをきちんと理解したうえで、不要なものを捨てているからこそ、情報を上手く取り扱うことができているのだと知り、少し安心しました。
情報のループをつくる
もう一つの原則は、「情報のループをつくる」こと。
情報ひとつひとつは、それだけでは役に立たないので、それを価値のあるものにするために、それまでに集めた情報とリンクさせること。
それを著者は、「情報のループをつくる」と言っています。
情報のループとは著者独特の言い回しですが、平たく言うと、情報をつなげて作られた仮設やストーリーのこと。
ただ、情報が直線的につながるのではなく、相互に影響し合いながら円のようにつながっているイメージなので、ループと呼んでいるそうです。
(言葉ではなかなかうまく伝えられないのですが、本書p102にイメージ図があるのでそちらを参照ください・・・)
情報は単体では意味がない。つながってこそ価値を生む。というのは素直に納得できることですが、情報を集める段階から、このループ(仮説)を常に意識することで、情報が自分の中に定着しやすいのだろうと思います。
「ループ=アウトプット」と捉えると、すっと腑に落ちます。
ここ数回、この書評ブログを続けていますが、その中でアウトプットを意識しながら本を読むのと、そうでないのでは、頭に入ってくる情報がまるで違うことを実感するからです。
また、仮説を立てるには論理的な思考が大切で、それには、これまた本を読むことが効率的であるとも書かれていました。それは、読書というものが、その本の著者の思考プロセスを辿ることでもあり、そこからさまざまな論理パターンを学べるからだと。
少し本筋からずれた気もしますが、この書評ブログを続けていく意義を、本書から別の角度から教えてもらった気分でもあります。
最後に
僕自身も数か月前から、特にWebマーケや制作、SEOなどの情報を中心に社会、経済など様々な情報に触れるようになりました。
たくさんの情報に接して、色々なことを知ることができていると感じる一方で、触れている情報量の割に、自分の中に残っているものが少ないと感じることも多くなってきました。
このままでは、情報を得るという手段が目的になりかねない・・・。そんな不安もよぎります。
情報過多な時代と言われて久しいですが、もっとうまく情報を扱えるようになれないか、と思う人はたくさんいるのではないでしょうか。本書は、そんな人たちにオススメの本です。
2016年5月26日 | MaedaKazutoshi | コメント(0)