ブックレビュー:ジャパネットからなぜ買いたくなるのか?
2016年4月28日 10:00
今週も最近読んだ本をご紹介します。
ECサイトの諸々をお手伝いをしている関連で、最近はECや通販に関連する本を手に取ることが多くなってきました。
今回ご紹介するのはその中から『ジャパネットからなぜ買いたくなるのか?』です。言わずと知れた「ジャパネットたかたの高田社長」に対するインタビュー記事がまとめられた一冊です。今回も運営堂 森野さんからオススメいただきました。
仕事で失敗してクヨクヨしがちな人に読んでほしい
本書は、サブタイトルに「一番売れた生放送の秘密」とありますが、具体的にどういうことをしてたくさん売れたか、そういった通販ビジネスのノウハウ集というよりも、高田社長が仕事に取り組むにあたっての心構えや、姿勢についての内容を中心に書かれています。
この一冊を通じて感じ取れるのは、高田社長のとにかく前向きなところ。読んでいるとその前向きさに感化されて、自分もどんどん前向きになっていく気がします。
そういう意味で、本書はビジネス書というよりは自己啓発本に近いのかなと感じました。実際、失敗するとすぐにクヨクヨしてしまう僕は、バリバリ啓発されちゃいました。いま、すっごく前向きですw
それはさておき。今回もいくつか、自分が気になったポイントをご紹介しますね。
後悔しないためには、前向きに常に最善をつくすこと
まずは、僕のように仕事で失敗してクヨクヨしがちな人に、参考になりそうなところから。
「売れない理由より、売れる方法を探します」というエピソードでは、その具体的な例が紹介されています。
ジャパネットでは、ショッピングチャンネル放送後に毎回反省会を開いていて、その反省会では禁句になっている言葉があるのだそうです。それは、「こんなはずではなかった」という言葉。
「こんなはずではなかった」と失敗を嘆きその原因を分析しているだけだと、反省会が慰め合いの場になり何の進展もないからという理由からだそう。
次に良い結果を出すための前向きなアクションにつなげるこのルール、誰にでも真似しやすいものだと思います。
また、「本気でやれば失敗を後悔しない」の項では、後悔する時間ほど無駄なものはないとし、全力で仕事に取り組むことが後悔をなくす方法だと説かれています。少し引用します。
1つひとつの仕事をするたびに「これが最高なのか?これ以上はできないのか?」って心のなかでつぶやきながら、ベストを尽くし続けてみてください。もし失敗しても、最善を尽くした結果であれば、必ず次の成功に結びつきます。それが結果的に失敗を忘れ、くよくよしないことにつながると思います。
つい言い訳を作って、半端なかたちでただ仕事をこなしてしまうことってあると思います。ただ、それを繰り返していれば、その言い訳は増えるばかり。
ほかの箇所にあった「失敗してクヨクヨしてしまうのは、性格のせいではなく、自分が全力でやっていないからではないか」という問いかけには、自分を振り返ってハッとさせられました。
前向きに、常に最善を求めてやること。それが失敗しても悔やまず、次の成功につなげるための秘訣なのだと改めて気付かされます。
仕事に熱を持つ。それには商品に惚れこむこと。
ジャパネットでの商品の売れ行きは、商品力以上に話し手の紹介の仕方にかかっている、と高田社長は言います。
そしてその中で重要なのは、お話のテクニックよりも、想いや情熱であるとも。
高田社長と言えば、少し訛りのある口調でハイテンションに(時に声を裏返しながら)商品を紹介するスタイルが特徴的ですが、あのスタイルは計算したものではなく、お客さんに商品の良さを少しでも伝えたいという想いから自然とああいう形になったんだそうです。
商品の良さについてお客さんに思いを持って伝えるために必要なことは、その商品をとことん研究すること。そしてその商品に惚れこむことだと言っています。
これは、サイト運用を担当する自分の仕事に置き換えると、サイトを運営するお客さんのことをよく知り、お客さんのファンになるということと同じ。そしてこれは、弊社代表がつねづね語っていることと共通することでもあるなあと思いました。
商売のその先を意識する。
本書には、前回紹介したフロンターレの天野さんの著作に書かれていることと共通することがありました。
それは、自分の仕事が何を豊かにしているのか、商売のその先を意識することです。
高田社長は以下のように語ります。
売上伸ばし、利益を出すことは企業として当然ですが、それだけを追求したのでは永続きしません。
企業活動を通して、どれだけ多くの人に感動を伝えられるか、どれだけ喜んでいただけるか。それこそが経営の醍醐味だと、私は思っています。
これは、フロンターレの天野さんが語られていたこととほぼ同じですね。
そして、その商品を買ったら、購入した人の生活がどう豊かになるかを考えること。それも共通しています。
また、高田社長の場合は、それをお客さんに伝えることで成功してきました。
例えば、ビデオカメラを売るのでも、画像の鮮明さや連続録画時間などスペック面だけを伝えるのでなく、「これでビデオを撮るとお孫さんの”動くアルバム”が作れて、かけがえのない宝物になりますよ。」と、そのベネフィットを伝えるということ。
「機能よりもベネフィット」。自分では分かっているつもりでも、つい忘れがちなので、この視点は持ち続けていたいと思います。
それにしても、成功する人たちって、同じようなことを考え、実行しているのだなと感じました。
最後に
先に書いた「後悔する時間ほど無駄なものはない」のパートで書かれていたことが、個人的には一番心に残りました。
どうにもならないことをあれこれ考えるより、前向きに次はどうしようかと考えたほうがいいに決まっています。会社のためじゃありません。あなたの人生をもっと楽しくするためです。
日々の仕事にまみれていると、つい忘れがちですが、これって本当に真理だと思います。
自分の人生を楽しくするために前向きに。そしてそれは独りよがりなことではなく、そうすることで仕事に、会社によいフィードバックを返すことになるのだと。
面白かったです。オススメです!
2016年4月28日 | MaedaKazutoshi|コメント(0)
「みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker (エムアイチェッカー)Ver.2.0」を試してみた
2016年4月27日 10:00
4月20日に、「みんなのアクセシビリティ評価ツールmiChecker (エムアイチェッカー)」がバージョンアップされましたので、変更点や機能をまとめました。
miCheckerとは?
miCheckerは、ウェブアクセシビリティ対応の取り組みを支援するために、総務省が開発し、無料で提供するアクセシビリティ評価ツールです。
miChecker Ver.2.0の主な変更点
- HTML5 (W3C Recommendation 28 October 2014) への対応
- JIS X 8341-3:2016への対応
- 各種付属文書の更新
2011年以来のバージョンアップで、待望のHTML5対応ということがあり、使う機会が増えそうです。
どんなことができるの?
大きく分けて3つ!
- アクセシビリティ検証・音声ユーザビリティ可視化
- ロービジョン シミュレーション
- JIS X 8341-3:2016 達成基準チェックリスト作成サポート
このような方にはお勧めです!
- これからウェブアクセシビリティを学びたい
- 自社サイトの検証を行ってみたい
- サイト改善のために検証したい
実際に、グラン堂のページを検証しながら、どんなことができるのかご紹介します。
インターフェースは、前のバージョンとほぼ同じです。
アクセシビリティ検証・音声ユーザビリティ可視化
「アクセシビリティ検証・音声ユーザビリティ可視化」を実行するするとこのような画面になります。
音声での利用をイメージしながら確認するために使います。
音声ユーザビリティビュー
音声ユーザビリティビューをスクロールすると、このようになります。
音声読み上げソフトを使用したときの問題点が可視化されます。
音声ユーザビリティビューでわかること
- 実際に読み上げられるテキスト
- ユーザーがページ内の情報に到達するまでの予測時間を背景の明るさで可視化
- アクセシビリティに問題があるところは、アイコンで警告表示
わかっているつもりでも、あたらためて可視化すると気づくことが多かったです。
目で読むのとは違い流し読みができないので、情報に到達するまでの時間への配慮が必要ですね。
ロービジョン シミュレーション
「ロービジョン シミュレーション」を実行するするとこのような画面になります。
弱視者・高齢者の利用をイメージしながら確認するために使います。
ロービジョン シミュレーション設定画面
視力、色覚異常、水晶体透過率(年齢)を設定できます。
ちなみに、視力0.1、色覚正常の私が60歳になるとこんな風に見えます。
実際にどのように見えるのか確認できると、実感がわきますね。
詳細レポート
詳細レポートでは問題がある箇所が「問題あり」「問題の可能性大」「要判断箇所」「手動確認」の4種類に分類されます。
問題を右クリックすると、該当するJIS規格「JIS X 8341-3:2016」の達成基準や達成方法にリンクされているので、規格のすべてを知らなくても、理解が深めやすいようになっています。
JIS X 8341-3:2016 達成基準チェックリスト作成サポート
miCheckerを活用すると、ウェブアクセシビリティの知識がなくても、達成基準チェックリストを作成することができます。
出力したCSVをエクセルのシートにペーストすると、miChecker評価結果が、実装チェックリストに読み込まれます。
実装チェックリストの主な項目
- 達成基準
- 達成方法
- テスト方法
- miChecker評価結果
- 実装チェックリストの該当番号
具体的なテスト方法が書かれているので、学びながら達成基準チェックリストを作成することができます。
また、miCheckerにはさまざまな手順書が用意されていて、試験、検証、基準の合否判定の方法についてくわしくまとめてあります。
JIS規格「JIS X 8341-3:2016」から勉強をすると膨大な資料に圧倒されてしまいますが、このmiCheckerを使うと、身近な問題からウェブアクセシビリティを習得することができます。
最後はやはり人が判断
アクセシビリティの検証は、機械的に判断できることと、人が判断しなければならないことがあります。
詳細レポートでは「問題あり」「問題の可能性大」「要判断箇所」「手動確認」の4種類に分類されるように、ほとんど人間の判断が必要になります。
例えば、画像のalt属性の内容が適切かどうか、コンテンツの重要度などは、使う人の立場になって判断することが大切です。
miCheckerは、あくまで人が判断するための支援として使うことに変わりありません。
人工知能がウェブアクセシビリティを評価する時代になるには、まだ時間がかかりそうですね。
総務省
みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker (エムアイチェッカー)Ver.2.0
2016年4月27日 | MutoRina|コメント(0)
ブックレビュー:僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ
2016年4月21日 10:00
最近は、Web制作のディレクションだけでなく、お客様の販促や集客のお手伝いをすることが増えてきました。
アイデアを出したり企画を考えたり、面白い仕事である反面、なかなかいい案が浮かばなかったり、実行しても思うように運ばなかったりと、大変なことも。
そんな時に、運営堂 森野さんにオススメされたのが、今回ご紹介する「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」でした・・・。
川崎フロンターレにアイデアマンあり!
ここ数日で立て続けに見かけた、Jリーグのサッカーチーム「川崎フロンターレ」関連の記事タイトルを並べてみました。
サッカーと相撲のコラボ?なんだかおもしろいことをやっているな。そう思われた方も多いのではないでしょうか。
実は川崎フロンターレさん、こういうオモシロ企画をずっと昔から実施していて、観客動員を増やし続けています。先の武蔵丸親方が始球式を務めた「イッツ・ア・スモウ・ワールド」など、時にダジャレも盛り込んだ企画たちは、サポーターから愛をこめて「おバカ企画」なんて呼ばれたりすることも。
そして、その企画の中心にいつもいるのが、今回ご紹介する「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」の著者、天野さんです。
そう。この本、そのユニークなタイトルからはわかりづらいのですが、お世辞にも強いとは言えなかったフロンターレの観客動員を増やすために、川崎フロンターレのプロモーションに携わる著者が何をやったかが書かれている、スポーツビジネス奮戦記なのです。
この本では天野さんを中心に実践したことがふんだんに語られており、スポーツクラブ経営に携わる人だけでなく、あまたのビジネスマン(特に、企画やマーケティング部門の方々)にとって、参考にしたくなるであろう内容だらけです。
とにかく、充実の内容なのですが、すべてを書くわけにもいかないので、自分なりに気になったポイントをいくつかご紹介したいと思います。
たくさん集めたアイデアは、くっつけたり、向きを変えたりして、企画になる。
フロンターレの集客アップにつながる企画を次々生み出すアイデアマンの天野さん。アイデアを探すこと、思いつくことがもう、息をすることのようになっているそうです。バスタイムでも、家族サービスのお出かけ先でも、時間、場所問わず、何かフロンターレのプロモーションにつながることはないか、無意識のうちに探し続けているとか。
そんな天野さんがアイデア集めで大切にしていることは、「ほんの少しでも面白いと思ったことは捨てない。」ということ。それが、集客プロモーションに欠かせない企画力を鍛えるからなんだそうです。
ちょっと個人的な話ですが、最近、森野さんのすすめで、日常の中で少しでも面白いと感じるようなネタを探し歩いたりしています。これって、天野さんのやっていることに似ているなあと。そして、その先にあるのが、著者のようなアイデアマンの姿なのだと思うと、これはずっと続けていきたいなと思います。
少し話がそれましたが、そうやって集めたアイデアもそのままでは使えないとも。アイデアは企画のカケラであって、それをくっつけたり、テトリスのように向きを変えたり、かたちを変えたりすることで、ようやく企画という形になるのだと書かれています。
いいアイデアを思いついた時点で、ついそこに固執してしまいがちですが、そこから実行可能な企画に落とし込むには、一ひねりも、二ひねりも応用が必要だということですね。
企画に不可能なことはない。というか、不可能にしない
タイトルにも使われている「算数ドリル」を作るエピソード。その結びで語られていることが印象的でした。
少し引用します。
僕は、この算数ドリルの企画を通して、いや、これから語るすべての企画もそうだが、「何事も一筋縄ではいかない」ということを実感した。それは「できない」「不可能」という意味ではない。何事もゴールに向かうためには、テトリスのように形を変えたり、視点を変えたり、人の話に耳を傾けたり、様々なところに隠れているヒントを一つひとつ活かすことで突破できる。最悪の判断は、諦めるということかもしれない。
本書を通して読むと分かるのですが、「最悪の判断は、あきらめるということかもしれない。」この一文に、著者の本質が見えるような気がします。つまりどういうことかというと、思いついて実行したが最後、成功に導くまで、やめずにやり続ける人だということです。
また、他のインタビュー記事では、天野さんは自らを「実践者」であると語られていました。
アイデア集めにしても、企画にしても、それを実行に移すのでも、すべては机上で終わることなく、実践あるのみの人でもあります。
その姿勢から、強い意志を持って実践を続けること。それだけが目標を達成するダイナモ足り得るのだと思いました。
ちなみに、算数ドリルを作り上げた直後、チームメンバーのマズいふるまいで、カップ戦の準優勝賞金を辞退することになるのですが、天野さんは、それすらも算数ドリル配布のプラスにしてしまいます。(詳しくは本書にて。)
その時を振り返って、「災い転じて福となす。ではなく、福とする。」と書かれているのですが、この「福とする」というところに、つくづく「天野さん強いなあ」と思うのでした。
企画の前に大切なこと
「ブームではなくライフ」という章では、クラブ集客の企画の前に考えておくべきポイントがいくつか挙げられていますが、その中で僕が一番心にとめておきたいと思ったのが、
「商売として収益面をクリアするのは第一のハードルとして、その先も意識すべきだ。最終のゴールとして収益だけを考えているとビジネスは行き詰まる」
ということでした。
集客や収益をもたらすことはビジネス上、必要なことですが、その前に「なぜその商売をしているのか?」という問いに明確に答えを持つこと。
そして、自分の商売は、誰を豊かにし、幸せにするのか?を考えること。それがまず大事だと。
また、そのターゲットさえブレなければ、あらゆることを取り込んで面白い企画を出せる。とも著者は言います。
これは、企画をする前の心構えとして、大きな土台のようなものを教えてもらった気持ちになりました。
その他にもまだまだたくさん・・・
上で書いたこと以外にも、僕が本書に付せんを貼った箇所は、まだまだたくさんあります。
見出しだけピックアップすると、
- 企画を実行に移すときの6つのキーワード「胃・色・柔」「安・近・単」
- 先を読む力と何とかする力
- 一石四鳥に発展させる
などなど。
参考にすべきポイントを挙げようとすると、枚挙に暇がありません。
後は、ぜひ本書を手に取って、確認してみてほしいです。
本書の初版は2011年と少し前ですが、アイデア→企画→実行に関する普遍的な内容で埋め尽くされているので、今読んでも役に立つこと請け合い。
超絶おすすめです!!
2016年4月21日 | MaedaKazutoshi|コメント(0)